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字面を追うだけなら、決して難しい内容ではありません。
しかし、この内容の深淵は、当事者レベルにまで想像を膨らませることが可能な人でない限り、到底安易な共感を語ることは出来ない激烈なものです。

今は引退してしまったかつての豪腕政治家野中広務氏と、人材育成コンサルタント辛淑玉氏の対談形式の一冊です。

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辛氏が言うように、私も政治家野中広務氏には、とても興味がありました。
そこには、ありきたりのつまらない政治家とは違い、表の顔はタブーを恐れず、官僚にも公明党にも、地方政治にも斬り込む鋭さと恐さを湛えながら、一方では弱者に今まで誰も見せたことのない優しさを投げる。
そのギャップがずっと気になってました。

対世間的に、相当なハンディキャップ(アタシはそう言ってしまうことにも抵抗がある)を背負い、微動だにしないと思われる社会に、勧善と立ち向かった人達です。

野中氏の、ハンデをも意に介さずバネにする強さには感動を覚えました。

もちろん、彼の「功」もあれば「罪」もあります。

その罪の最もたるものが、
自自公政党の擁立、ガイドライン法案制定、加藤紘一氏の切捨て。

暗躍し影の総理大臣とも言われましたが、私は氏のやり方は間違ってはいないと思う。
正しいとも言えないかもしれないけど、既存の政治家よりよっぽどマシ。

彼は、一見汚いやり口のような妥協(談合)で融和を図りました。
それを旧態と嘲笑う人もいるかもしれないけど、少なくとも森政権以降、都心と地方、官と民で争い続け泥沼になった事態を、誰が収拾してきたでしょう?

旧態体質を良しと言うわけではないけど、二大政党政策が良いとも言えない。
日本人には日本人ならではのやり方がある。
確たる主張も無いくせに、なんでもかんでも欧米に倣う政治家などは非常に胡散臭い。

それだけで考えてみると、やっぱり日本には伝統的に二大政党制は似合わない。
小選挙区制より、中選挙区制がいい。
この本を読み、憎まれ役を買って出てダーティーなイメージが定着した野中氏(元自民)だけど、弱者へ向ける視線は、現在の政治家の誰よりも優しかったんじゃないかと思います。
そこには身ひとつで叩き上げてきた信念がある。

敵味方関係なく、必要とあらば誰とでも手を結ぶやり方は「日和見」的で「コウモリ」と公然と揶揄されたけれど、しかし、彼は地方と被差別集落(いろんな意味で)に改革をもたらしました。
コウモリのレッテルをいただきながら、では現在、誰が彼の功績を継ぐことができるだろう?

日本人は基本的に、白黒をはっきりつけられない人種です。
政治家もしかり、一般人もしかり。

◆ね、とらちゃん、今月交際費使いすぎちゃった、、、出張精算遅れちゃった、ね、なんとかして。
  絶対埋め合わせするからさ、ね、ね、ね?

政治も同じ様なものだよ。

◆わぁーったよ、じゃあさ、こっちは黙っててあげるから、この法案を通してよ。

なんだかんだ言っても、日本人はそういうトコがある。

もちつもたれつ。。。

これも問題がないとは言えないけど、自民の55年体制はこうやってきたのだ。
それが正に日本人の体質だと思う。

それが狂ってきたのは苦労知らずの2世議員、2世閣僚が台頭してきたからではなかろうか。
清廉潔白さをアピールしつつ、親の七光りで確固たる政策も信念もないまま旧態依存の世界に飛び込み、
誰にも気をつかうことなく偉そうな顔をしていたから、官僚に馬鹿にされ、メディアに馬鹿にされ、経団連に馬鹿にされ、食いものにされたのだと思う。

自民然り、民主然り。

地方の顔役、民政官、議員、市長、知事、国会議員、閣僚。
基はと言えば揉め事のまとめ役。
汚れ役でもあり、嫌われ役でもある。

ダーティーは部分はどうしても払拭できない。

けど、無理に隠そうとして清廉潔白さを前面に押し出すから、何かあった時に叩かれる。

談合とか癒着を礼賛するつもりはサラサラないけど、「もちつもたれつ・・・」。
過去の政治家はそうやって政策を通してきた過去がある。
それを忘れていない人々が多いだけのこと。

啖呵を切っても政策を実現できそうもなく、政策転換しようとしている現政権より、よほど戦っていたんじゃないかな。

それでも「馴れ合い政治はけしからん!」と言うなら、そいつらを手玉に取れるくらいの力量を備えた現在の政治家は?
自ら汚れ役を買って出る政治家は?

ハイ、脱力。


少し逸れてしまいましたが、本の事に戻って。。。

なるたけフラットな立ち位置で読んだつもりです。
でも、野中氏には惹かれましたが、辛氏には好感を持てませんでした。
対談を纏める役割を担い、さぞかし緊張していたのだろうと想像はつくけど。
野中氏への斬り込み方は鋭いのに、その(野中氏への)応答が感情に走り過ぎてる感が否めない。

インタビュアーであり会話の進行の都度、丁寧な解説する辛氏。
彼女に対する知識は一片も持っていませんでした。
だからフラットな立場で読んだつもりなのですが、、、。
んー、アタシは彼女のその境遇に、過去の辛酸に憂いはするけど同調は出来無い。
それは彼女が在日朝鮮人だからではなく。

やたらと感情に走るところが煙い。

もう少し、差別について語るなら、被差別の当事者として冷静な観点を持って欲しかった。
(冷静ではいられない、生々しい過去が想起されたかもしれないけど、書籍になるのだからさ。)

重ねて言いますが、私は決して旧態の馴れ合い政治を礼賛してるつもりはありません。
けれど、そういう体質が出来上がっちゃってるんだから、新政権が樹立されたからって、簡単には切り崩せ無い。

野中氏のような老獪な傑物が、新政権に居ないのが残念。

自民に随分啖呵を切ったくせに、遅々として進まない公約実現。

ま、今更妥協も出来無いのだろうけど。。。

人のための政治を実現するため、せいぜい頑張ってください!


Bach -- Passacaglia in C minor, BWV582-A

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